何ができて何ができなかったのか。
レースに向けて何ができて、何が足りなかったのか。その答えを導き出したい。
これがこの記事をまとめた大きな目的である。
2024年、僕はアイアンマン完走という壮大な目標に向かって努力して、その目標を達成した。
しかし後で振り返って検証しようにもレース途中でのGarmin腕時計の電池切れにより分析するためのデータも残っておらず、それで終わり。
これが前回のアイアンマン南北海道2024における最大の悲劇だった。
この悲劇を繰り返さないため、そして記憶ではなくデータを証拠として残したいため、改めてGarminを購入し、分析するために必要なセンサーとデータを揃え。
集めた複雑なデータ集をAIを駆使することで2年越しの検証がやっと行えた。
これまで運動経験がない人が、フルアイアンマン、ロングディスタンスのトライアスロンを完走するには、どれくらい練習すればいいのだろう。
週に10時間? 月に100kmのランニング? それとも、もっと必要なのか。
2025年、僕は様々な想いと想いと共に佐渡国際トライアスロンのAタイプを完走した。
ただ、そこに至るまでの練習が十分だったとは思っていない。
自分には仕事があり、家族との時間があり、練習できる時間は限られている。
思うように積めた時期もあれば、ほとんど練習できなかった時期もあった。
こうした悩みは、仕事や家庭と両立しながらロングに挑む人にも、共通する部分があるのではないだろうか。
だからこそ、実際にどれだけ練習し、その準備が本番の結果にどう表れたのかを、記録から確かめてみたい。
これから挑戦する人にも、完走した先の改善点を探している人にも、自分の準備を振り返る材料になればと思う。
では、実際にどれだけ練習していたのか。そして、その準備は本番の結果にどう表れたのか。
今回は、GarminからTriGoに取り込まれた2025年1月から8月までの活動記録と、佐渡の公式リザルトを使って振り返ってみる。
レース当日の天候、身体の状態、そしてゴールまでの出来事は、当時の記録としてnoteに残している。
あの日の自分が感じたことと、今の自分が数字から読み取れること。その両方の視点から、今回の完走を紐解いていきたい
8か月の活動時間は95時間14分だった
まず、全体の集計結果から。
2025年1月から8月までの総活動時間は95時間14分。
活動回数は125回、トライアスロン専用のトレーニングアプリ、「TriGo(トライゴー)」に表示されたTLSの合計は6,219だった。
8か月の平均は、月11時間54分。週換算では約2.7時間になる。
数字に起こしてみると、練習を実際に積んだ身として思っていた以上に少ない。
もちろん、これは記録された活動の合計なので、未記録の練習があれば含まれないし、マラソン大会や長距離イベントなども含まれている。
(と、書いたものの自分は機材のトラブルがない限り確実に記録するようにしている。記録できなければ積み上げた成果が見れずに相当なショックを受けることになるからだ…。)
したがって、「95時間だけ練習して佐渡を完走した」と断定することはできない。
それでも、当時の運動習慣を考えるうえでは重要な記録には違いない。
ここからは、大きく三つの観点で記録を見ていく。
まず、8か月間にどれだけ活動し、その時間を何に使っていたのか。
次に、その準備で迎えた本番の結果は、他の完走者と比べてどうだったのか。
最後に、周りと比較して最も大きな差が出たランで、当日何が起きていたのか。
練習の積み上げ、本番の結果、当日の記録。この順にたどることで、次に見直したい点を探していきたい。

TLSは、TriGoに表示されるトレーニング負荷の指標として使用した。
数値が高いほど優れた練習という意味ではない。今回は、8か月間の負荷の推移を見るために使っている。他サービスの負荷指標とは、そのまま比較できるとは限らない。
TLS(トレーニング負荷)とは?
TLS(Training Load Score)は、TriGoで表示されるトレーニング負荷の指標だ。運動時間や強度などをもとに、身体にかかった負荷を数値で捉えるために使う。
同じ1時間の運動でも、軽く動いた場合と、強い負荷をかけた場合では、記録されるTLSは異なる。
ただし、数値が高いほど、良い練習だったという意味ではない。
大会や一度の長時間運動で月間TLSが大きくなることもある。その数字だけでは、継続して練習できたか、十分に回復できたか、本番に必要な能力が身についたかまでは分からない。
今回は、活動時間とTLSを並べて、佐渡までの8か月間にどのくらい活動し、負荷がどう変化したかを振り返る。
※TLSはTriGoの指標。他サービスのトレーニング負荷指標とは、必ずしも直接比較できない。
TriGo(トライゴー)とは?
これまではTrainigPeaksに課金してトレーニング管理をしていたが、英語主体でUIもうまく使いこなせず、日本製のこちらに乗り換えました。トレーニング管理とAIのアドバイスがとにかく優秀で分かりやすい。また開発態勢も素晴らしく、不具合解消から新機能搭載に至るまで改善速度が異常です。
練習量は右肩上がりでも、一定でもない
グラフを見ると、活動量は一直線に増えていないし、一定でもない。
体調がいい時もあれば、悪い時もあるし、仕事の状況や気持ちの変化にも左右される。
1月から3月にかけて活動時間は増え、3月にはフルマラソンも1度走っている。
しかし、4月以降は一度減少する。
5月の活動時間は8時間25分、TLSは477。1〜8月の中で最も低い負荷だった。6月も9時間34分にとどまっている。
そして7月、8月になって再び増えていく。
大会が近づいたからといって、毎月計画的に練習量を増やせていたわけではない。
長距離のレースに向けた理想的な積み上げと、実際の生活の中でできた積み上げは当然ながら大きく異なる。
この理想と現実のギャップをいかに埋めていくかが課題だ。
TLSが高い月ほど、準備が進んだのか
もう一つ見ておきたいのが、TLSだ。
3月の活動時間は13時間45分、TLSは1,029だった。一方、7月は13時間47分とほぼ同じ活動時間なのに、TLSは830。
同じ時間を運動していても、記録された負荷は異なる。
ただし、3月30日のフルマラソンは、単独でTLS 374を記録している。8月23日の約5時間の長距離バイクも、TLS 398だった。
月間TLSの高さは、必ずしも日々のトレーニングを継続できたことを意味しない。一度の大きな負荷が、月間の数字を押し上げることもある。
ここで知りたいのは、単に「どれだけ身体に負荷をかけたか」だけではない。
その負荷を、どれだけ継続的に積み重ねられたのか。
ロングディスタンスの準備を考えるうえで、こちらも重要な問いだと思う。
また、長時間動き続けるためには、補給も欠かせない。
佐渡では、前年の経験を踏まえてエネルギーとナトリウムの摂取方法を準備し、レース中も実践した。その内容は別の記事にまとめている。
▶ 佐渡トライアスロン2025|レースレポート② 補給戦略で走り切る
補給の準備と、最後まで走り続けるための身体の準備。その両方を、本番の結果と照らし合わせて考えたい。
8月に増えたのは、持久力か、それとも疲労か
8月の活動時間は17時間53分。1〜8月では最も長く、TLSも1,077と最大だった。
8月23日には103km、5時間06分のバイクを記録している。本番に向けて暑熱対策も兼ねて、長時間動き続ける練習を実践していたことが分かる。
一方で、長い活動をしたことだけでは、それが当日のパフォーマンスにどうつながったかまでは分からない。
準備として役立ったのか。回復は間に合っていたのか。
今回の月別集計だけでは、佐渡当日にどの程度疲労が残っていたのか、万全の状態で大会に臨めたのかは判断できない。
それを調べるには、直前数週間の練習負荷、休養日、体調、レース当日のデータを照らし合わせる必要がある。
これは、「レースに向けてパフォーマンスを最大に持っていくためにはどうすれば良いか」次の分析課題として残しておきたい。
種目別での割合
さらに種目別に見ていくと、冬の期間はランの比重が大きく、春以降はバイクに使う時間が増えていた。
この結果は当然で、冬は道路の凍結などの影響もあったり、特に寒さの影響から外でのバイク練習は少なくなりがちで、そもそも冬はマラソンのシーズンでもありランナーの数が増加する。
逆に春になり気温が上がり始めると、マラソンのパフォーマンスは落ちてきてバイクのシーズンを迎え、冬に少なくなっていたサイクリストが急激に増える。
夏になれば海開きとともに海でのOWS(オープンウォータースイム)つまりスイムの練習が増えていく。
実際周囲からこのような影響を受けながらも、佐渡を意識して種目別の練習を行ってきたし、それがその結果としてはっきり表れている。
(一般的なスポーツのシーズンに合わせて練習を組むことは仲間との練習や大会参加などによる活動モチベーションの維持には最適だと思う。しかし、アイアンマンや佐渡などのロングディスタンスを狙うトライアスリートにとっては必ずしもそうではないと今は思う。)

ここで注意したいのは、活動量が増えた月の中身だ。
3月のランには、マラソン当日の4時間19分が含まれる。8月には、翌月の本番を想定したブリックランのマルチスポーツなど「その他」が5時間35分ある。
8月の月間表示は17時間53分だが、スイム・バイク・ランだけでは12時間13分だった。
総時間と、その時間を何に使ったか。両方を見ることで、準備の中身が少し具体的に見えてくる。
※種目別グラフは活動カードの分単位表示を合計しているため、月間表示とは端数差がある。
バイクとランに、ほぼ同じ時間を使っていた
8か月間の3種目とマルチスポーツなどを含むその他の活動カードを合計すると、95時間14分だった。

| 種目 | 活動時間 | 3種目内の割合 |
|---|---|---|
| スイム | 7時間1分 | 7.4% |
| バイク | 40時間45分 | 42.8% |
| ラン | 39時間49分 | 41.8% |
| その他 | 7時間39分 | 8.0% |
| 合計 | 95時間14分 | 100% |
バイクとランが、ほぼ半々だった。
この割合だけで、適切な配分だったかどうかは分からない。種目ごとの経験や得意不得意、練習の長さや強度も関係するからだ。
ただ、ランにも約40時間を使っていたことは確認できる。
本番でランに苦しんだ理由を考えるなら、合計時間だけでなく、その時間で何を準備できていたのかを見る必要がある。月間走行距離はその指標の一つなのだが…。
月間走行距離平均は52km
タイトルを見て、冗談だろ!?
そう思った人は恐らく、サブ4以上を目指すフルマラソンの探究者だと思う。
まずはこのグラフを見てほしい。(恥ずかしい結果なので、本音としては見られたくないのだが。)

月間走行距離を重視するランナーなら、この月平均約52kmという数字には驚くかもしれない。自分でも、グラフにしてみて少なさに驚いた。
ただし、これはラン単独として記録された距離で、大会やブリックなどのマルチスポーツ内のランは含んでいない。
それにしても、ほとんどの月が50kmに届いていない。トライアスロンでは限られた時間を3種目に配分する必要があるとはいえ、ランで長距離を走り続ける準備をどれだけ積めていたのか、疑問が残る。
一方、1月は大会による距離の上乗せがなく、日々のランで96.2kmを積んでいた。3月は97.9kmだが、そのうち42.3kmはフルマラソン当日の記録だ。同じ約100kmでも、中身は違っていた。
年末年始休暇の時間の余裕や、年始特有の謎の意欲が1月の積み上げを後押ししたのかもしれない。その翌月の減少には、日常に戻ったことや疲労が影響した可能性もある。ただ、2月はバイクの活動が増えており運動全体が止まったわけではなく、単純に月が変わって意欲が削がれたとは言えない。
この月平均52kmという記録で佐渡を完走したことは事実だ。
これから挑戦する人にとって、一つの参考にはなると思う。ただし、「月50km走れば完走できる」という目安にはできない。それまでの運動経験や、他種目の練習も含めての結果だからだ。
反対に、完走することが目的ではなくなった経験者から見れば。
完走はできたものの、本番のランでは同年代の中央値から1時間以上の差がついた結果の大きな要因とも言える。
今の私としては、これを「少ない距離でも完走できる」という成功体験だけで終わらせたくはない。
と、カッコつけてみましたが簡単に言えば、自分にとっての伸びしろだから。
(それでも、当時仕事と家族を両立(?)しつつ、相場的には少ないながらもこの練習量を捻出して完走した自分は大いに褒めてあげたいと思う。結果よりも過程は誇れると今でも自負しています。)
さらに当時の練習を振り返ると、
「今日はあまり負荷をかけず軽めに終わらせるつもり」の練習でも、いざ走り出せば体が求める気持ちいいペースまでついつい上げてしまったり。
今日は調子がいいからもっとペースをあげられる!
キツイけど乗ってきたからインターバルをもう1本追加だ!
という短絡的な充足感や達成感に負けてしまい、
結果的に1回あたりの練習強度を上げ過ぎて、疲労や負担の割に結果が伴わなかった実感もある。
加えて、多くの時間と距離を積めていたわけではないことがわかる。
その日の体の感覚に任せて強い負荷をかけることと、レースにおいて目標とするペースで長距離を長時間走り続けることは、同じではなかった。
限られた時間だからこそ、その時々の感覚で短期的に頑張るだけでなく、次の練習につなげられる強度でいかに時間と距離を効率的に積めるのか、そう考えて長期的な視野で練習をする必要があったのではないか。
今回の数字は、その問いを残している。
(特に意志の弱い自分がこれを達成するためには、いかに自分の感情をコントロールしながら長く継続させられるかというマネージメントの仕組みが必要不可欠であり、今後の課題の一つだ。)
本番の結果を、平均・中央値と比べてみる
では、この準備で本番はどうなったのか。
公式総合記録は15時間06分33秒。
Aタイプは913人が出場し、完走者は561人。
完走率61.4%の大会で、自分は男女総合433位だった。
40〜44歳男子の公式年代別順位では、69人中57位だった。

| 種目 | 公式タイム | 公式種目順位 |
|---|---|---|
| スイム | 1:28:50 | 250位 |
| T1 | 0:07:23 | 掲載なし |
| バイク | 7:28:34 | 310位 |
| ラン | 6:01:46 | 550位 |
| 総合 | 15:06:33 | 433位 |
公式種目順位には、その種目を終えた後にリタイアした選手も含まれる。そのため、同じ完走者集団に対象をそろえて比較した。
また、全完走者561人と、公式年代別順位が付いた40〜44歳男子69人の平均・中央値を、公式記録から集計した。

同年代の中央値との差は、次のとおりだった。
| 種目 | 自分の記録 | 同年代中央値 | 差 |
|---|---|---|---|
| スイム | 1:28:50 | 1:32:52 | 4分02秒速い |
| バイク | 7:28:34 | 7:10:02 | 18分32秒遅い |
| ラン | 6:01:46 | 4:56:29 | 1時間05分17秒遅い |
スイムは、同年代の中央値より速かった。
バイクは同年代より18分32秒遅い。ただ、全完走者の中央値との差は3分47秒で、全体では真ん中に近い位置だった。
最も大きな差が出たのは、ランだった。
全完走者の中央値と比べても58分03秒遅く、同年代では1時間以上の差があった。
完走者だけにそろえた種目別順位でも、スイム222位、バイク301位に対して、ランは549位だった。
今回の結果では、練習で多くの時間を割いていたはずのランが大きな改善候補になることが分かる。
ランに時間を使っていたのに、なぜ差がついたのか
8か月間のランは39時間49分。3種目の活動時間の41.8%を占めていた。
それでも、本番ではランで最も大きな差がついた。
先ほど月間走行距離の観点からも分析をしてみたが、ここで考えたいのは、月間走行距離や合計時間だけで準備を評価できるのか、ということだ。
佐渡のランは、4km泳ぎ、190kmのバイクを終えた後に始まる。
ラン単独で走る力に加え、そこまでの疲労を抱えた状態で動き続ける力も問われる。
今回の結果から、確認したいことは三つある。
一つ目は、長時間動き続けるための準備。
ランの時間を使っていても、短い練習が中心だったのか、長時間の活動をどれくらい積めていたのかで、中身は変わる。
また、最近取り組み始めているLT1と2の意識。中途半端に高強度を積んで疲労を溜めこみ、かけた時間の割に思ったほど練習を積めていなかった可能性もある。
現にランはサブ4を達成した以降、ここ数年は伸び悩んでいるので、ここがまさに改善の余地だ。
距離や合計時間に加え、運動強度、1回ごとの長さや継続性などを総合的に見直したい。
二つ目は、バイクからランへつないだときの余力。
当日はバイク終盤に脚の異変があった。
ランの結果を考えるときには、バイクのペース配分や負荷も一緒に確認する必要がある。
バイクが全体中央値に近いタイムだったとしても、それを自分にとって無理なく出せていたかは、別の問題だ。
現状バイクではパワーメーターがないので、ペース配分が適切だったのかは不明だ。
心拍数だけでは限界があるため、次回出る時までにはパワーメーターを導入したい。
(ただ、めちゃくちゃ高いんだよなぁ…。Garminかwahooか、セール待ってます。)
三つ目は、当日の補給、痛み、休憩の影響。
最終タイムだけでは、どの要因がどれだけ影響したかは分からない。
いつからペースが落ち、そのとき身体に何が起きていたのか。区間ごとの記録と、当日の体験を照らし合わせたい。
完走できたことと、十分に準備できたことは違う
今回の数字を見て、改めて考えたことがある。
僕は佐渡Aタイプを完走した。これは事実だ。
しかし、95時間14分という記録だけから、「ロングは週3時間程度の練習で十分」と結論づけることはできない。
それまでに積み上げてきた運動経験もある。
大会当日の気象条件でのペース配分や補給、コース条件、当日の体調も結果に影響する。
さらに、完走という結果だけでは、どれほど余裕があったのか、どこに改善の余地があったのかまでは分からない。練習からレースに至るまでの膨大なデータを収集分析し、今回のように検証することで初めて見えてくるものがある。
また、今回の比較では、スイムは相対的な強みだった。バイクは全体中央値に近く、ランでは大きな差がついていた。
次に考えたいのは、同じ生活時間の中で、準備の中身を変えたら結果は改善するのか、ということだ。
練習時間を増やすことだけでなく、自分の特性を踏まえた練習時間の長さ、強度、継続性、種目の組み合わせ。
そして、本番での余力の残し方。
限られた時間だからこそ、どこに時間を使うかを具体的に考えたい。
当日の記録を詳しく振り返る――心拍・ペース・暑熱負荷
ここからはさらに当日の様子を細かく分析していく。
大会結果から見ると、最も大きな課題が現れたのはランだった。
男子40〜44歳の中央値と公式記録を比較すると、スイムは4分02秒速く、バイクは18分32秒、ランは1時間05分17秒遅かった。最も大きな差が現れたのはランだが、バイクにも改善余地がある。そこで、バイク中の負荷と、その後のランのペース・心拍・暑熱負荷を合わせて振り返る。
1.当日の記録

以下はGarminの記録である。公式記録とは計測区間や操作のタイミングが異なるため、タイムや距離には差がある。
| 項目 | スイム | バイク | ラン |
| 記録距離 | 3,976m | 184.94km | 42.02km |
| 記録時間 | 1:28:42 | 7:23:51 | 6:02:21 |
| 平均ペース・速度 | 2:14/100m | 25.0km/h | 8:37/km |
| 平均心拍 | 148bpm | 150bpm | 144bpm |
| 最大心拍 | 161bpm | 177bpm | 165bpm |
ランの平均心拍は、バイクより低かった。しかし、深部体温でみるとその逆。ランにおいて、心拍数の低さの割にバイクよりも高い値となって現れている。
また、心拍の結果だけで「ランには余裕があった」とは言えない。歩行や停止、ペースの急低下を含めた平均だからだ。
2.スイム――途中の減速はあったが、終盤には戻していた
当時多くのリタイヤが続出するほどの大荒れのコンディションに見舞われたスイム。レース前日は、当日からは想像できないほどの凪だったので、自然は本当に読めない。
Aタイプの後にスタートしたBタイプでは当初の距離よりも短縮されるほどだった。当時はクラゲにも刺されたような痛みも感じたし、スイムキャップがきついのか頭痛も感じていた。
でも、このどうにも抗えない自然との共生もトライアスロンの魅力の一つだと思う。
その環境もあってか当然スイムの500mごとのラップには大きなばらつきがある。
最も時間がかかったのは6本目(3km地点)で、14分03秒。その後の7本目(3.5km)は10分27秒、最後の476mは100m当たり2分09秒(500m換算では10分18秒)まで戻っている。
途中で大きく減速したものの、終盤まで一貫して落ち続けたわけではない。波や潮の流れ、進路、混雑、計測の影響も考えられるため、この区間だけで体力不足とは判断できない。実際、1回はコースから大きくロストしかけた記憶もある。一番遅い区間はその影響だと思う。
周りも同じ環境だったからか、大会結果との比較でも、スイムは今回の大きな時間差の原因ではなかった。むしろこのコンディションの中、よく泳げたと誇るべきだろう。
3.バイク――長時間の負荷を抱えてランへ
バイクは約7時間24分。平均心拍は150bpmだった。
当時のGarminの設定では、心拍ゾーン4以上にいた時間が約2時間31分ある。ただし、このゾーン設定が自分の生理的な閾値に正しく対応していたかは確認できていないため、「閾値以上で長時間走っていた」とまでは言えない。(というのも、つい最近このゾーン設定を見直したばかりだからだ。)
それでも、長時間のバイクを終えてからフルマラソンに入ることは、ランを考えるうえで欠かせない条件である。
COREの表示も、バイク中に推定深部体温が39℃前後まで上がり、その付近で推移する時間があった。ランのスタート時点で、すでに運動による疲労と暑熱負荷を抱えていた可能性がある。
4.ラン――歩行には給水と冷却の時間も含まれる
ランの1kmラップを区間ごとにまとめると、後半ほど時間がかかっている。
| 区間 | 平均ペース |
| 1〜10km | 約7:11/km |
| 11〜20km | 約8:44/km |
| 21〜30km | 約8:41/km |
| 31〜40km | 約9:49/km |
| 41〜42km | 約8:51/km |
※給水、冷却、歩行、停止を含むラップから算出。
Garminの分類では、ランが5時間05分、ウォークが53分37秒だった。
ただし、このウォークをすべて「走れなくなった時間」と捉えると、当日の実態から離れてしまう。歩きながら給水し、何度も頭から水を被り、背中に氷を入れていた。このように深部体温を下げるために、意図的にペースを落として冷却した時間も含まれている。

グラフの色帯は、20〜23kmの減速、24〜29kmの回復、33〜36kmの再度の減速を見比べるための目印である。心拍ゾーンやヒートゾーンを表しているわけではない。
5.冷却で一時的に走れる感覚が戻った
当日の記憶として強く残っているのは、冷却しても体温がなかなか下がらなかったことだ。
腕時計でCOREの表示を確認していたが、水を被っても、ほとんど下がらないと感じていた。それでも、氷を背中に大量に入れて一時的に38℃台まで下がった際には、ペースを戻せたタイミングがあったと思う。
記録にも、ラン中の推定深部体温やHeat Strain Index(HSI:暑熱負荷インデックス)が上下する様子が残っている。ラン中のHSIは、グラフ上では最大約6.4まで上がっていた。
この体験と記録は、暑熱負荷が走行を制限する一因だった可能性を示している。ただし、冷却した正確な時刻は覚えていないため、どの温度低下とペース回復が対応するかは確定できない。
また、冷却したから温度が下がったのか、歩いて運動強度が下がったからなのか、その両方なのかも分離できない。
一時的にペースを戻せた場面がある一方、後半には暑熱負荷が下がっても十分に戻せない区間がある。暑さに加え、そこまでの疲労や補給など、別の要因も重なっていた可能性がある。
6.サランラップと、記録の限界
当日は弱い内臓をカバーする寒さ対策で、胸・胴体に広くサランラップを巻いた状態でレースを続けていた。
これは振り返りで外せない条件だ。身体の冷却やセンサー周辺の測定環境に影響した可能性がある。ただし、この記録から影響の大きさや、失った時間を算出することはできない。
COREは深部体温の推定値であり、当日はCOREアプリ側で心拍をうまく取り込めていなかった。Garminには心拍が記録されているが、それによってCORE側にも心拍が渡っていたと確認できるわけではない。
さらに、COREの日別画面にある「ヒートゾーン3で9時間34分」は、レース前後を含む一日の集計である。そのすべてをレース中の時間とは扱わない。
今回重ねた曲線も、スクリーンショットから読み取った概形であり、秒単位の元データによる解析ではない。細かな数値より、変化の流れを確認するための図として掲載している。

心拍計はGarminのHRM-Pro一択。胸で計測は腕よりも正確性に優れるが、防水モデルでないと水や汗に弱い。このモデルでは2年使って水没なし。
深部体温計はCoreを使用。暑熱トレーニングと、レース時にオーバーヒートの指標として見える化し、感覚だけに頼りきらず、冷却タイミングを逃さない。
このレースから見えた課題
今回のランは、暑さの中で給水・冷却と歩行を繰り返しながら、走行を維持しようとした時間だった。
冷却によって一時的に走れる感覚が戻った記憶はある。それでも深部体温を低く維持することができず、後半にはペースが落ちた。暑熱負荷だけでなく、バイクから持ち越した疲労や、長時間運動を支える補給も含めて考える必要がある。
次回に向けて確認したいのは、バイクを終えた時点でランに使える余力を残せているか、冷却しやすい装備になっているかあるいは着替えるか、そして疲労がある状態でも走り続けられるか、という点だ。
「ランが遅かった」で終わらせず、どんな条件で走れなくなり、何をすると一時的に戻せたのか。その過程まで残すことで、次のレースに使える記録にしていきたい。
また、歩きの時間を可能な限り削減できれば、一気に中央値に近づけることができる。当たり前のことだが、ランではなるべく歩かずに、冷却と補給が行えるようにする必要がある。
このため、まずは単発のフルマラソンで止まらずに走り続けられることが当面の最重要課題であり、タイム短縮における1番の近道とも言える。
取り急ぎ今シーズンのマラソンから、この課題解決に向けて取り組んでいきたい。
今後の分析について
今回は、佐渡に向けた8か月の活動量と種類別の配分、そして本番での同世代の完走者との比較、最後に本番で大きな差が出たランに着目をして分析を行った。
今後もこのような分析を続けていくのは当然であるが、もう一つ記録しておきたいのが体調や気持ちの変化だ。
僕は、練習や仕事の疲労が重なった時期に体調を崩し、2週間ほど練習できなくなることがある。ここ数年は、冬から春にかけて花粉症と重なると症状が重くなり、まともに練習を積めず気持ちも落ち込んでしまう時期も何度かあった。
ただ、何が原因だったかを記録なしに決めつけることはできない。
アレルギー検査や対策も含め、いつの時期に体調を崩しやすく、どのくらい休み、どう対策して復帰、練習再開できたのかを残していきたい。
練習できた日の都合の良い数字だけを見るのでなく、積み上げが止まった期間にも目を背けず向き合うことで、自分にしかない固有の特性のようなものが見えてくると信じているからだ。
僕が知りたいのは、一般論としての正解だけではない。
限られた時間の中で、ただ一つしか身体を持たない「自分自身」がどこまで速く、強くなれるのか。
そのために、これまでの記録を使って検証を続けていこうと思う。
集計について
活動記録は2025年1〜8月のGarminからTriGoに取り込まれた記録を使用した。大会・イベント・その他の活動を含み、9月の佐渡本番は除外している。未記録の活動がある可能性もある。
95時間14分は月間表示の合計。種目別時間は活動カードの分単位表示から集計しており、その他を含む合計は94時間21分となる。両者には53分の表示差がある。
大会のタイム・公式順位は、Triathlon Japan掲載の2025年佐渡国際トライアスロンAタイプ公式リザルトを使用した。平均・中央値・完走者内の種目別順位は独自集計している。
同年代比較は、公式年代別順位が付いた40〜44歳男子69人が対象。各種目の中央値は別々に算出しており、それらの合計が総合タイムの中央値になるわけではない。
これは個人の活動記録と大会結果に基づく分析であり、他の選手にそのまま当てはまるものではない。
DO ANYTHING — Let’s Try Anyway.
今回のデータは練習から15時間を超える長時間のレース本番の最後までバッテリーが持つGarminのForeRunner965を使用。電池切れで本番のデータが分析できないのでは話にならない。(過去の自分の体験に基づく。)
あわせて読みたい|佐渡2025に関する記録
レース当日の出来事や、実際に取り組んだ補給戦略については、こちらに記録している。
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